とってもわかりやすい新型コロナの話

新型コロナウイルスで心が疲弊していませんか?そんなに心配しなくても…というお話を、Wellness Design Labのパートナーでもある「くるドク」こと琴野巧裕医師がとってもわかりやすく、丁寧に説明してくださっています。
長文ですが、これを読むと新型コロナのことがよくわかり、心も落ち着くかもしれません。

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とってもわかりやすい新型コロナの話

新型コロナのことで不安が広がる中、もし興味があればお付き合いください。

多くの医師が新型コロナのことを取り上げたわかりやすい記事を書いて下さっているので、是非参照して欲しいと思いますし、私は身近な人達に向けて、少しでも不安がなくなればいいなと思って書いています。(だから多少の文脈などはご容赦ください)

 

情報が錯綜して、モノの買い占めの問題、学校閉鎖の問題、収入減の問題といろいろと不安があるかもしれませんが、医師としては新型コロナのことではっきりしていることをみんなに知ってもらいたいと思います。

 

1.新型コロナってどういう病気?

ウイルスという、ばい菌(細菌)と比較にならないぐらい小さな粒子によって感染する病気です。

通常のコロナウイルスは流行期にはかぜの原因の35%ぐらいを占めると言われていますが、終生免疫(つまり水ぼうそうみたいに一生かからなくなる免疫)が得られず、毎年のようにかかってしまうわけです。そのコロナウイルスが変異して(形を変えて)、感染力と病原性が強くなったため問題となっています。

 

2.おそれるべきか?

みなさんのよく知っているインフルエンザと比較してみましょう。多い年はなんと1,000万人も罹患しています。これからの流行次第ですが、おそらく1,000万人はかからないでしょうし、インフルエンザの検査は高熱が出た方しか現時点ではしないと思うので、現実には無症状の方も含めるともっと多いと思われます。

一方、コロナウイルスは現時点では「無症状の人も含め」1,000人強です。検査していない人を含めるともっと多いと思いますが、問題になってから1か月も経過しているのでインフルほど感染力が強くないことがわかりそうです。

そして、実は有名なインフルエンザでも毎年死亡者が出ています。少ない年で200人超、多い年で2,000人近くも亡くなっています。インフルエンザ関連死としてとらえると1万人近くが亡くなっていると厚労省ホームページにあります。それは、1,000万人もかかっていて一定数は重症化してしまうのですが、高齢者や重篤な合併症がある方、子供たちが残念ながら命を落としています。

そして、現在アメリカでも今シーズン1,900万人以上がかかり、1万人以上が亡くなっています。おそるべしです。

それに引き換え、これからまだまだ患者数が増えることが予想はされていますが、新型コロナにはまだ1,000人強程度の罹患です。死亡者は6人。中国のデータからは死亡率が2.5%前後と考えられており(武漢の死亡率が異常に高く、その他の地域では1%未満の死亡率)、インフルより重症化する可能性があることは示唆されますが、そこまでたくさんの人はかからないということが予想されています。

これまでのSARSやMERSなどは死亡率10%と30%でしたが、死亡率が高い病気は人にうつす前に死んでしまい、終息が早いのですが、インフルみたいに死亡率が低い病気は感染者が生きていることや病院受診をしないためいつまでも終息しない傾向があります。

この点、SARS/MERSほどは死亡率が高くないため、流行はするだろうが、インフルエンザまでは広がらないというのが専門家達の予想になります。

 

3.どんな人が病状悪化するの?

前述の通り、高齢者は免疫力が低く、体がウイルスと戦争状態になった時に年齢相応の老兵(自身の免疫細胞)を戦地に送り込んでも負ける人が出てきます。また、分かりやすさでいうと癌患者さん(体力の落ちた方と言う意味であり、全ての方ではありません。誤解のないようにお願いします)などはやはり、体内に他に敵がいる状態で全ての兵隊(免疫細胞)をウイルスに向かわせるわけにもいかないでしょう。小さな子供も、子供兵が一生懸命戦っても負けるかもしれません。だからこそ普通の健康な人にとっては恐れる必要性は高くないのですが、中国の29歳の医師が命を落としたところを見ると、過労や不眠状態などで免疫力が低下すると衰弱兵では戦えず一気に命を落としかねないことを意味します。

 

4.予防は?

さて、そうなると予防に関してですが、皮膚はバリアがあるため粘膜にウイルスが付着しなければOKです。つまり、目・鼻・口腔がターゲットとなります。眼鏡している人は防御力がアップするかもしれませんが、基本的には手についたウイルスが一番重要で、手洗いがよいとされています。石けん切れなら水洗いでもOKです。しっかり流すことです。

次に、マスクです。残念ながらウイルスの粒子は小さいため、マスク越しでも入ってきますが素よりはいいでしょう。と言いますのは咳などで飛散するウイルスの塊を直接受けないためにも重要ですし、人は1時間に何十回も無意識に顔を触る癖があるようなので、自身の手についたウイルスから感染するリスクも減らせます。そして、こういった対処で一番重要なのは人にうつす可能性を減らせることです。ダイヤモンドプリンセス号の一件を思い出してみましょう。非常にたくさんのウイルスが狭い空間に巻き散らかされたら、その後隔離してもかかってしまうのです。もっとわかりやすくしますと、いくらインフルエンザの予防接種を受けても、同居している家族や職場内で周りがみんなインフルエンザになってしまうと、空気中のインフルエンザ量が増えて、最後は自分もかかってしまうのと同じです。つまり、マスクをしてウイルスの塊を飛散させないことも愛する人達を守るために重要なこととなります。

したがって、マスクなどを買い占めて自分だけが安全に思っている方は大間違いで、マスクは広く行きわたらせて、空気中などに飛散するウイルス量を減らし、周りの人を感染させないことこそが自分がウイルス感染しないためのよい方法となるわけです。

 

5.病院の対応はどうなってる?

検査に関しては、今週から保険適応(つまり医師が必要と判断したらできる)となるようですが、実際オーダーすることは非常に少ないです。理由としては、現時点では自院で調べられないため、保健所に連絡し検査キットを取り寄せた後、特殊なBOXに入れて検査施設に送る必要があります。となると、実質発熱者が来たその度ごとに保健所スタッフがすべての病院に出向くわけにはいかないので、検査はかなり限定的になろうかと思います。

皆さんの不安からの受診もわかりますし、体調不良の社員が新型コロナだったらと恐れる企業側は絶対にすぐに病院に行けと言うでしょうが、重症な患者様が入院している病院が一番守られないといけないため、現在の対応として発熱の方が来たら、車内や隔離部屋に待機してもらい、こちらからインフルなどのチェックを行います。陰性かつ呼吸苦がなければ、医師も濃厚接触せず風邪薬などを処方し帰宅です。逆に言うとその程度しかしてもらえません。

 

感染症に対応できる病床が全国で3,000程度(流行時は5,000床は確保するとのこと)しかありませんので、これから流行ると軽症な人はまず自宅療養となると思います。入院が増えてくるとすぐに感染症病床が埋まり、次に感染症対応でない個室になるでしょうがすぐに埋まりますので、次は感染者があつまる大部屋入院となるでしょう。となると、軽症な人がウイルス飛散量が多い大部屋に入院するリスクはわかってもらえるかと思います。

重症な人は呼吸器などを使った治療を要するため、軽症な人や無症状の人はまず大部屋になるでしょうから入院するのはリスクしかありません。

 

そして、療養期間が未確定です。インフルエンザの場合は発症してから5日を経過し、解熱後2日間は出勤停止とされていますが、新型コロナは決まっていません。医師としても出勤停止日数を言いづらいところもあり、どこまでがドクターストップの出勤停止かがはっきりしていない問題(病欠・有給・保険など)もあります。

 

となると、どういった対処がよいのでしょう?

本来は37.5℃を4日以上経過した場合は受診となっていますが、企業側は発熱した場合受診しろと言わざるを得ないでしょう。したがって、保健所に電話して発熱外来にかかる必要があるかどうか、必要が乏しければいつまで自宅療養したほうがよいのかを聞いて従うことがよいと思います。保健所の答えが、現時点での最新の答えですし、休むための後ろ盾が得られることとなります。

 

すぐに受診した方がよい時は、やはり高熱や息苦しさが出た場合(つまり肺炎でないと出ない症状がある時)です。保健所に連絡の上で対処できる病院にすぐに連絡して受診しましょう(まれに満床と断られるので、病院をいくつか聞いておきましょう。)

 

6.最後におすすめのこと

ウイルスにさらされることが多ければ多いほど感染してしまうため、ウイルス量を減らす必要があります。飛散量は空気が乾燥していれば遠くまで飛びますので、加湿器などは有効と思いますがなくても大丈夫です。たまに窓を開けて、ウイルスを外に散らばらせて薄めることが有効と言われています。

また、体を冷やすと免疫が落ちますので、温かいものを食べて、体を冷やさないように。寒すぎる場合は暖房もいい方法とも一部言われています。しかし、上記の空気の乾燥にもつながるため、暖房と共に適度に換気がよさそうです。

実はうがいが感染症の予防効果には乏しく、喉の奥に付着したウイルスも取れませんので、少しでよいのでこまめに水分を取ることです。理由は水分と一緒にウイルスを胃に落とすことで胃酸による強力な殺菌効果が期待できるからです。また、発酵食も免疫力を上げるよい方法とされていますのでご参考まで。ちなみに、たくさん笑う事もいいみたいですので、自宅でも楽しい会話をしたりエンタメ見たり、楽しんじゃいましょう。

 

また、不眠や過労は厳禁です。中国の29歳の医者も亡くなっておりますので。

皆さんと、家族を守るため、ちょっとしたことはみんなで気を付けて、困ったことがあれば可能な限り相談に乗れるので、こういった時はお互い助け合って乗り切りましょう!

 

☆2020/3/4 追記☆

検査は受けるべきか?

保険適応になると、必要があれば医師の指示のもと新型コロナの感染チェックができることとなります。しかし、この点もダイヤモンドプリンセス号を思い出してみましょう。陰性を確認後に下船して、その後発症した人は何人もいます。つまり、検査にはタイミングが悪いと陽性にならない問題があります(インフルエンザ検査と一緒ですよね)。また、偽陰性(本来は陽性なのに検査の性能や検体がうまく取れてないなど、間違えて陰性となる)の問題、逆に偽陽性(本来は陰性なのに、間違って陽性になる)の問題があるとされています。これまで一般的に行われてきた検査ではないので、信頼性が劣るのは当然です。新型コロナかどうかで治療方針が変わらないにも関わらず、検査を行うことに何の意味があるのでしょうか?検査に行くということは発熱外来に行くこととなりますので、上記の通り、自分より前に何人もの発熱患者さんがいた場所に行くことのリスクは計り知れないように思いませんか?そのリスクに見合ったメリットがあるならすべきと思いますが、現時点では思いつきませんので、無症状や軽症の人はやはり自宅療養でやり過ごすのがベスト!というのが私の見解です。

テレビなどで「検査数が少ないのでもっと検査しろ!」という政治家さんや、不安なので検査したい人、陰性証明をもらいたい人もいて、医師の中でも「もっと検査して陽性の人を隔離して、高齢者に触れ合わないようにして欲しい」などと言っておられる方もいますが、検査陰性でも否定できないことはプリンセス号で証明済みなので、その理論は非常に間違っています。

そんな中で、検査が保険適応になりかつ患者さんの自己負担を公費補助する予定となっていて、必要な人には称賛されると思いますが、医師の指示があれば18,000円(の予定)の検査を実質タダできるわけなので、軽症の方でも検査を希望して病院に殺到する可能性があります。検査数が増えるでしょうが、すべて我々が支払っている税金や社会保険料からのサポートとなるため、やはり検査には医師の判断が重要で、不必要な方にはやらないで!という社会的なコンセンサス(合意)が必要に感じます。

 

大事なことは、検査しようがしまいが手洗いやマスクなどで個々人が最大限の配慮をしてうつらない、そして人にうつさないようにすることが最重要事項と思います☆

 

最後になりますが、日本での死亡率が少ないことは、医療従事者が頑張っている証でもあるかと思います。日本政府など指示系統を司る人達や、生命がかかる重要な治療方針を決める医師、そして最前線で自身の感染を恐れながら戦う看護師さんなどの全ての医療スタッフに向けて敬意を払いたいと思います。

 

2020.3.4 琴野 巧裕

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