とってもわかりやすい新型コロナの話 ーその後ー

 

前回のまとめから2週間経過し、世の中が大きく変わりました。身近なところで言えば、マスクが手元になくなった方もいらっしゃるでしょう。不安が募りますね。

さて、徐々に明らかになってきた新型コロナウイルスは結局どうなのという疑問を少しでも解決しましょう。

くるドク 琴野巧裕はこちらから

前回の記事はこちら「とってもわかりやすい新型コロナの話」

感染力について

やはり爆発的な感染力には乏しいのではないかと思いませんか?確かに世界的に流行っているのは明確でありますし、世界の慌てようを見ると怖いようにも思いますが、日本で1シーズン1,000万人が罹患するインフルエンザ(流行期が3-5カ月ぐらいと考えたら週50万人ぐらい?)と比べるとどうもそこまでは広がらなさそうです。

しかし、これもひとえに国民全体でマスクをし、手洗いを徹底し、外出を控えてもらったためとも言えますし、暖冬の影響もあるかと思いますが、お陰様でインフルエンザを診断することもほぼありません(インフルエンザ感染症も少なくなった他、検査を希望して来院される方も、我々もこのご時世の中、飛沫が飛ぶような検査をしなくなったのもありますが、、、)。

このように、みんなでできることは各自でやってもらうことでの予防効果は、非常に高いように感じますし、今年風邪引いたりインフルエンザに罹患した方は少ないのではないでしょうか?

 

命にかかわるの?

クルーズ船と日本国内での発症を比べてみましょう。閉鎖空間や空調などの影響もありウイルス飛散量がとても多いことが予想されたクルーズ船では、たくさんの人がかかりました。当然、体に攻め込んで来るウイルス量が多いため、死亡率は1%程度と高いなぁと思ったのですが、結局は日本国内と比較すると低かったのです。この点は長期間の船旅ができるような健康状態の人がかかったからと考えてよさそうです。

また、現在の日本国内での見た目の死亡率の高さは、スクリーニングとして幅広く検査をしているわけではないことから、分母が小さく、基本的には重症者への検査(+濃厚接触者)のみの検査なので数字自体は高くなります。他国のようにスクリーニングすれば軽症や無症状の方でたくさん見つかりますので、見た目の死亡率自体は低くなりますので、死亡率自体は上下するものと考えてよく、日本人の死亡率が特別高いわけではありません。

日本国内では若い人もかかってはいますが、やはり高齢者が多く罹患しています(症状が出て受診につながったり、重症化して検査を受けることが多いからでしょう。一方で若い人は無症状ながら濃厚接触者として検査したり、軽症で検査を受けて陽性になることが多いようです)。他の病気と比較するものでもありませんが、インフルエンザに比較するとごく少数ではありますが、やはり残念ながら年輩の方を中心として大事な命が失われている現状があります。現役世代での重症化例はそれほど多くなさそうですので、その世代の方はあまり恐れすぎずに。しかし、高齢者や子供達を守るため自身がスーパースプレッダー(感染源)にならないように最大限の注意を払って行動して欲しいと思います(理由は後述)。

 

検査は?

検査に関しては、正確性という観点からはやはり問題点が山積みのようです。検査陰性でも感染は否定できず、罹患者が検査陰性を確認し退院後に再び陽性になった方も何人もいらっしゃる(偽陰性の問題や、新型コロナも2タイプあるからインフルA・Bのようにまたかかる?とか、潜んでいて再活性するから?とか言われています)ことを考えると、検査が陰性だったという事自体は何の意味もなさないでしょう。だから、もっと検査をするべき!という主張は、前回も記載した通り間違っていそうです。

 

ワクチンや特効薬に関しては?

残念ながら期待をするのはもう少し待ちましょう。いろんな薬剤の効果やワクチンの試験が開始となった報告がありますが、例えばイレギュラーな治療は既存の治療を行って、なお病状が改善しないときにやむを得ず投与することが多いです。となると、病状が悪い中でイレギュラーな治療を行うことについての安全性は全く担保されません。海外では抗HIV薬の効果があったなどの報告はありますが、本当にその薬剤が効果を成したのか、自然によくなる人だったのかがわかりません。医療は統計を基に科学的に効果のあったものに対して、国や社会がお金などのサポートをしてくれるおかげで多くの人が助かるようなシステムです。現時点で効果や安全性の判定がなされていない使い方をされることのデメリットも考えなければならないでしょうし、日本では適応外使用(違う病気用のお薬を使う事、例えば風邪と診断した人にタミフルを処方するようなこと)は許されていません。どちらも長い時間をかけて効果・安全性を評価することが一般的ですので、今すぐにできたものとか、少数の成功例をもとにして広く使うことは決してオススメではなさそうです。

となりますと、開発は急いでもらって効果・安全性判定にいかに早く入っていくかが、薬剤が本当に安心して投与できるまでの期間に影響しそうです。本当に大変なこととは思いますが、製薬会社さんには頑張ってもらいましょう。

 

市販薬について

以前から、風邪で熱が出ているのは、ウイルスを早く撃退するために体温を上げているので、解熱薬は飲まないほうがよいということを言う人がいますが、この点はある意味正しく、ある意味正確ではありません。ウイルスに罹患し発熱しているのは、免疫を活性化することや、ウイルスなどを弱めるためには必要な生体反応です。そこで、免疫の活性化とはどういうことか考えましょう。

前回のまとめにも書きましたが、免疫細胞を外敵から自分を守る兵隊と考えましょう。活性化というのは、ウイルスの大群や強い敵が攻め込んできたときに、城主が「兵隊を集めたり、強く鼓舞して」昼夜問わず戦わせることを言います(大群や強い敵としたのは、弱い敵や少数の敵が攻めてきても、戦争はすぐに終結して熱が出るまでもなく無症状だからと仮定しています)。となりますと、若い兵隊であれば、危機的状況に対してテンションアゲアゲで数日間であれば徹夜で戦い続けることもできるでしょう。

しかし、高齢の兵士ではどうでしょうか。翌朝、場合によっては当日の夜にはエネルギーが切れてパフォーマンスが落ちるのは明確です。だから一気に攻め込まれ病状が悪化して急変するわけです。またウイルスには勝利しても、戦いが長期化しずっと発熱することで長期間食欲が低下して兵糧攻めにあうこともあります。そのような場合に、戦争を横目で見てチャンスをうかがっていたMRSAなど、通常の人には弱毒菌でも、腹ペコ兵士には猛威となり降参することにもつながります。医師であればそういった患者さんをたくさん診てきていますし、解熱薬を投与すべきかどうか、その種類も検討しながら使用することとなります。熱が出て寝込んでベッドから動けず、ご飯も食べられない状況をしばらく続けるのか、解熱薬を飲み、短時間でも日光浴や家族との会話ができ、トイレまで歩行ができ、消化・吸収のよいものを少し食べられるほうがよいのかはその人の体力や年齢、持病の重症度によって違いがでますよね。

若くて持病のない人にとっては解熱薬を飲まずに数日間発熱で食事がとれない兵糧攻めになったとしても、ストック(体力)もあるので問題になることは少ないでしょうと言い換えるほうがよいかもしれません。したがって、解熱薬を投与しないほうがよいということは全ての人に当てはまることではなさそうですし、逆に投与しないほうがよいかどうかは全ての人に当てはまるような一定の見解は出ていませんので非科学的な発言となりそうです。

 

私からの提案

若い人達は自分達が大丈夫だからと感染予防を怠り、諸先輩方や子供達にうつすのは自分のためにもよくありません。免疫力の弱い彼らがたくさん罹患し重症化することが見込まれたため、学校が閉鎖となり、イベントや外出の自粛などで経済が滞ったわけです。

特に高齢者の影響はかなり大きく、現役世代にとっては子育ての一環も担ってくれている大事な存在ですし、彼らが入院を要することとなった場合、病床はいっぱいになることも予想できます。そこから医療スタッフが罹患すると病棟閉鎖にもなりますし、スタッフ数が少ない病院では休診になるかもしれません。そうなると、自身が病気や急に大きな怪我などに見舞われた際に、アクセスのよいクリニックへの受診や信頼する病院へ入院できなくなるというデメリットや、現役世代が負担している税金や医療費を入院費用としてたくさん使う事にもなります。

納得できる医療経済を自分達で作って行き、いつも唱えている医療界のSDGsを達成するためにも、現役世代が年輩の方々や子供達を守らなければならず、自分のためにも感染拡大を阻止したい重要な理由がここにあります。

さらに現実的な話としても、マスクが病院から消えた瞬間に手術ができなくなり、外傷などで急な手術を要する多くの患者さんが困るでしょう。

また、コロナ罹患者を差別することも疑問でしかありません。コロナ罹患者は(不確実ですが)抗体ができている可能性があり、人への感染力がないよとわかった瞬間に「誰よりも近くにいて安全・安心な人」になります。さらに言うと、自身が一度罹患しているため、どのようなことがリスクだったか、初期症状がどうだったか、注意点は何だったか、治療はどのようにしたのかなど有益な情報をたくさん持っています。不安な気持ちはわかりますが、差別をすることはこれらの情報が得られないことや、自分が罹患した時に責められることを考えてもデメリットしかありません。

しかし、これらは全て不安な気持ちから生まれる行動ですので、最後にはっきりとお伝えしたいことに続きます。

 

明言しておきたいこと

新型コロナウイルス感染症は、現時点で特効薬はありませんが、我々医療スタッフや病院は常に全力で戦います。病院は安心できる場所でなければならず、だからこそ専門家達が集まり情報も集約され力を発揮しています。私にも信頼すべき先輩方や意識の高い同僚、優秀な後輩など尊敬すべき仲間が全国にいます。彼らもきっと気持ちを同じくして戦ってくれています。

我々にできることも多くはなく、全員必ず助けます!なんていうことは決して言えませんが、未知なる敵との戦いに対して一番のリスクを抱えながら、真正面からみんなの想いや期待を受け止め、一人一人の命に真摯に向き合い、全力で一緒に戦います!どうぞご安心ください。

 

個人的な意見と提案 

今回の一件で、新型コロナウイルスでも未知なるものに関しての恐怖心から大恐慌になっています。世界で高い死亡率を誇る感染症はいくらでもあり、このような世界ではいつ入ってきてもおかしくありません。

となると、今の対策が最善であったのかどうかを検証していく必要があり、次の感染症に向けてシステムを構築する必要があるように感じます。与党や野党、専門家同士で主張を繰り広げケンカして平行線をたどっている場合ではなく、手探りでやっている対策を現在進行形でブラッシュアップし続ける必要があります。効果の検証ができるので動かないより動いたほうがよいです。なので、今回の休業補償などの公費の使い方について私の意見も述べておきたいと思います。

例えば、未知の死亡率が高い感染症にかかった可能性がある方は(現役世代を想定)、収入などは全て公費負担として症状が軽ければ自宅隔離(空き家活用でもOK)とし、家族はホテルに移動してもらいます(逆ではホテルの人のリスクになるので)。その一家にかかる休業中の収入や生活費は全て公費負担にする代わりに、自由度は減りますが外出禁止とし、食事などは宅配ボックスなどにお届け。採血などで徹底的に抗体やデータチェックを行い、連日何度も遠隔診療を受け、どのような経過をたどる病気なのかを徹底的に見極めます(もちろん1プッシュなどで救急車の要請ができたり、入院ができる体制も整えた上で)。そのほうが、日本全体の外出自粛などで観光業や飲食、エンタメ、発熱で出勤停止となることで人的ダメージを受ける多くの企業への影響を最小限にすることはできますし、全国民への多額の予算を使った休業補償などもしなくてよくなりますし、コロナ発覚後に外をうろつくことも予防できます。

徹底的な観察を行い、感染源の同定や経過の実態が見えてくれば、専門家会議により推奨の隔離方法や日数、検査法、治療法、臨床経過を政府から発表してもらい人々が安心した生活ができるようにマネジメントするのはいかがでしょうか?

政府や専門家だけの少ない頭ではなく、一部的外れでも全国民の頭を使ったほうが絶対によい意見がでると思いますので、感染症専門医でもないのに発言致しました。1億人で考えた中から最高の戦略をベースにしてブラッシュアップし、システム化することが今後の感染症に有用ではないかと思っています。

その点、ソフトバンクの孫さんが100万人の検査費用をサポートしたいと発言し、多くの人から医療崩壊するからやめて欲しいとの意見を参考に、マスクのサポートに変わったことは本当に評価できる点しかありません。と言いますのは、自分の意見をまずは発信したこともですが、評価され、自身のよいと思って発信したアイデアをすぐに方向転換できるなんてなかなかできません。影響力のある人のこういった行為が議論を呼び、アクションにつながって世界を変えている好例ですよね(だって、みんな検査を受けたかったのに、この発案のおかげで検査をしすぎると医療崩壊するじゃないか!と検査を積極的に受けたい、という風潮が一気に消えた印象を受けました)。マスクが市場にないのにどうやってサポートするんだ!と言わず、怖い日々を過ごしながらも自宅で自粛している高齢者に少しでも手作業で作ってもらったりなど、どうやったら社会システムでアイデアが叶うかをみんなで考えていきましょう☆否定的より建設的でお願いします。

また、新型コロナの全体像が見え始めたので、各県でコロナ陽性毎に人を集めて記者会見するのはリスクであることもそうですが、もはやその発表に意味が少なくなってきています。知事などの重要な決定権を持つ人の大事な時間を奪うので、記者会見は少し控えて自治体ホームページでの連日更新や、1週間ごとにインターネット媒体でのまとめ発表をもとにテレビなどでの情報整理でもよいかもしれません。爆発的な感染拡大などの悪いニュースや、特効薬がわかった!などの良いニュースなどではその限りではなくすぐに発表することは前提で。

 

最後に何度も言いますが、医療従事者も感染者の矢面に立っており不安も多い中で、みんなとても頑張っています。正直、今後の院内マスク不足が懸念され院内でもマスクをしていない人もいるぐらいですが、病院や医療関係者は困った人がいれば見捨てません!

いかなる状況下でも、みんなが納得できるように全力で戦っていますので、どうぞご安心ください。

 

2020年3月17日 琴野 巧裕

 

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